ザ・セル

 グチョヌルイヤ映像満載サスペンスかと思って見たら、映像自体はミュージック・クリップみたいに無意味に美しかったので平気。退屈するかもと心配していたら、変で綺麗な映像を見てるだけでも十分楽しめた。
 ミュージック・クリップみたいな無意味に綺麗な映像をしこたま映画に盛り込む説得力を出すために、他人の心の中に入って治療するという設定を後付けしたとしか思えねー。そして、どうせ人の心象風景を舞台にするなら、極めつけの変態を出してやれといわんばかりの変態ファック野郎の変態ファックぶりがすごすぎる。被害者をネットリ時間をかけて監禁・溺死させ、死体を漂白剤で洗い、被害者が泣き叫び溺れる様を撮ったビデオを見ながら、自分自身を背面の無数のピアスから伸びた鎖で宙に浮かせて、下にある漂白死体とビデオを交互に見ながらオナニーするというすさまじい変態プレイ。なんかもう、心象風景よりもこのプレイでおなかいっぱい。バッファロー・ビルでもここまではしないさ! ってゆうか、準備がすさまじく大変なノデ(背中から血が出てるし)、理想のオナニーのために妥協しない姿勢は、変態ファック野郎とはいえ男の鑑だと思った。見習いたい(無理だし無茶)。
 変態ファック野郎の心の中にいたときには変態ファック野郎の為すがままにされていた(首輪つけられてるし)ジェニファー・ロペスが、舞台を自分の心に移した途端にものすごいドSになるのでビックリしますね。変態ファック野郎の手足をボウガンで射抜いて固定→マウントポジションから容赦なく顔面パンチ→背中から金属バットならぬ剣を抜いて腹を抉る。ドMにはたまらない華麗な連続技にギャワー。
 一方で、現実世界でジュリアさんは監禁されつつ全自動システムで溺死しつつもあるという、『羊たちの沈黙』そこのけのものすごい放置プレイ中だったのだけれど、あんまり省みられなくてかわいそう。これでFBIの人が間に合わなくてひっそり死んじゃったら浮かばれなさすぎる。
 変態ファック野郎って、ヴィンセント・ドノフリオが演じていたのね。確かによく見れば『フルメタル・ジャケット』の微笑みデブの顔だ。坊主じゃないと意外と気がつかないものじゃよねー。
 心象風景のえも言われぬ美しさというと、ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』を思い出すなあ。治療するために患者の心に入った医者が、行ったきり戻れなくなって完全に患者の夢の中の登場人物に成り果ててしまうお話。