34話『寺田屋大騒動』

 前回が山南敬助切腹だったし、『寺田屋大騒動』というサブタイトルだし、悲しみをのりこえて不逞浪士をバッサバッサと斬りまくる話かと思ってたら、全然違うのでビックリしますね。はっ! そんなことはわかってたよ。単身赴任で寂しい近藤が現地妻といっしょにいたら、本妻が心配して様子を見に来て寺田屋で鉢合わせてギャワー! おもしろすぎる。
 近藤勇という男は、山南の死をそんな軽々とのりこえて、ちょっと深雪太夫を身請けするんですかー? 山南が安らかに死ねたのは明里のおかげだと思った近藤は、体を壊した深雪太夫を身請けすることにする。一方で坂本竜馬は、山南の遺言『託す』を受け取り、「この国を動かすのは人と人との結びつきだ」という山南の言葉を思い出し、長州と薩摩を結び付ける決心をする。つまり、近藤が山南の死から学んだのは、女は海だということだけらしい。こんな男を信じて死んじまったとなれば、山南も草葉の陰で泣いてらあ。前回の重苦しい雰囲気とは打って変わった軽いコメディタッチの話だけれど、山南の死という線でしっかりつながっていて、近藤と坂本が完全に袂を分つ話になっているところがおもしろいね。
 だいたい、つねさんというよく出来た立派でかわいい妻がありながら、妖艶な舞妓に惚れるならともかくとして、同じタイプの深雪太夫に浮気する近藤の気持ちがサッパリわからん。どう見ても優香よりも田畑智子のほうがかわいいじゃないの! そりゃ人肌恋しい時もあるだろうけれど、そのための島原とか祇園でしょう? 土方みたいにクールに遊べばいいのに。ってゆうか、不器用だからどれが自分の本気かわからなくなってしまうあたり、近藤はまったくもってギャルゲーやエロゲーの性根の腐った主人公みたいだと思った。誰も傷つけたくない、傷つきたくないんじゃよ? 絶対心の奥底では、つねと深雪太夫を両手に抱えた都合のよいハーレムエンドになる選択肢を探しているんじゃよー! そんな近藤の行く末は、どれを選んでもバットエンドで確定。
 つねと深雪太夫の直接対決は、「京都にいる間は近藤の心はお前のものだ。大事にしておきな」という近藤に都合のよすぎる結論だったのでビックリしつつも納得した。『WHITE ALBUM』の森川由綺と緒方理奈のビンタ合戦みたいに、つねと深雪太夫がお互いを「泥棒猫!」「女狐!」「淫売!」「すべた!」「獅子身中の虫!」と罵りながらキャットファイトしたらイヤだなーと思ってたノデ。その一方で近藤は沖田みつに腹を殴られるとか。この場は丸く収まったけれど、あの後でつねは「あの女……あの女……」と呟きながら控え室のロッカーを形が変わるほど蹴り上げていると思った。
 近藤のみならず、永倉や原田も結婚を身近に考えるようになったらしい。「男と女になった」なんてセリフは、使いたくても使いどころのないセリフなので、真顔で言えるのは永倉だけなんじゃよ? あと、捨助おりょうを譲ってくれと坂本竜馬に談判していた。なんか捨助って、長谷川哲也『ナポレオン 獅子の時代』のビクトルみたいだなー。歴史の有名人には一通りちょっかいを出すんじゃろか。
 今回は斉藤も見事にボケ役。結婚式のときに借りた5両をつねに返せたけれど、その5両でつねは寺田屋に行ってしまう。間の悪さにいじける斉藤。源さんの涙ぐましいフォローといい、土方も交えたあほすぎる修羅場の三文芝居といい、今回は見所が多いなあ。
 伊東甲子太郎は土方とともに西本願寺に挨拶に行くが、田舎者丸出しで寺側の感情を斟酌しない土方の態度に眉をしかめていた。前回の間の悪いお悔やみといい、伊東は顔だけの演技が似合うなあ。あと、江戸にいて山南の切腹のときその場にいなかった平助は、切腹自体はわりと淡々と受け入れていたみたい。今後この二人はどうやって結びつくんじゃろか。
 佐久間象山は近藤のことを「鬼瓦」と呼んでいたけれど、オープニングクレジットで近藤勇香取慎吾のバックの映像が鬼瓦なことに今気がついた。どうでもよい。