別役実『けものづくし』 平凡社ライブラリー

別役実『けものづくし』 平凡社ライブラリー

もっともらしくとんでもない嘘を混ぜつつ、たまに本当(なのかホントに?)のことも入っていて、いろんな動物を題材にしたエッセイとゆうか、連作短篇集なのかなー。

澁澤龍彦とかボルヘスみたいに、実在(じゃないのもいるけれど)の動物から連想や想像でいろんなところに話が広がっていき、どこまでこの駄法螺が続くんだろうと心配になって読んでると、とりとめがなくなってしまうところが好きすぎる。あくまで真面目な筆致なところも、ウィーン会議派(ナボコフ命名)的思考を恣意的にすさまじくねじ曲げて援用するところも好き。条理を突き詰めた果てが不条理になるところがすごく好き。

最後の「動物園」で言われているように、動物を見ることは、動物を見る人間自身を見ること。表紙がアルチンボルト(遠目に見れば人間だが、近くでよく見ると動物の集合になっている騙し絵)になっているのも納得できすぎる。

動物そのものではなく、動物をめぐる人間の思想(動物は人間のことなど知ったことではないのだ)を書いてきたから、澁澤やボルヘスのエッセイを想起させるのかにゃー。澁澤やボルヘスが語るのは文献や伝説の中の動物、すなわち人間の中にある動物だった。人間の想像力って意味が通っているようでわけのわからんことになるから楽しい。そんな人間の想像力も、さらに斜め上をいく自然には敵わないのだけれど。バージェス頁岩動物類ばんざい!