ミッシェル・ロヴリック『世界の奇妙な博物館』 ちくま学芸文庫

●ミッシェル・ロヴリック『世界の奇妙な博物館』 ちくま学芸文庫

世界の奇妙な博物館 (ちくま学芸文庫)

世界の奇妙な博物館 (ちくま学芸文庫)

日本からは「目黒寄生虫館」が採られていることからわかるように、世界中(メインは欧米圏だけれど)の変な博物館をカタログ的に収集した本。この世には、博物館に収集されない事物なんて存在しないのだと言い切れる。

『万国奇人博覧館』や『イグ・ノーベル賞』と、変な事物を集めているところは似ている。あと、真似できないし真似してはいけないけれど、突き詰めた果てにあるおかしさと素晴らしさが堪能できるところも似てるにゃー。紹介の筆致も、ユーモアに溢れてはいるが、けして馬鹿にはしていない。よかれ悪しかれ度外れたものに対して、人は敬意を表してしまうものらしい。

わけのわからない情熱に突き動かされてやってきた結果が、博物館という形に結晶しているところがすごくいい。個人を讃えるには『万国奇人博覧館』、研究を讃えるには『イグノーベル賞』があるけれど、やはり真似できないし真似してはいけない個人や業績には博物館が必要なのだ。マルタン・モネスティエせんせいもがんばれ。

奇妙な博物館の成り立ちには二種類あるのがおもしろいね。収蔵品を集めた本人が作っちゃうタイプと、あとから有志が作るタイプ。本人が作ったものは、収蔵品以上に博物館そのもののやりすぎっぷりが楽しい。あとから有志が作ったものは、作られた経緯や場所(狂気博物館のように、場所そのものに意味がある)がおもしろい。本書にはネット上のデータベースとしての博物館の有用性を説いているけれど、それでもやっぱり博物館は地べたにあるほうが楽しいと思う。

伏見稲荷は千本鳥居のある表側か取り上げられていたけど、真に奇妙なのは裏側だと思う。阿佐田哲也神社や関帝廟が混在するカオスっぷりは筆舌に尽くし難すぎ。