A・E・コッパード『郵便局と蛇』 国書刊行会
- 作者: A.E.コッパード,A.E. Coppard,西崎憲
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1996/07/01
- メディア: 単行本
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『銀色のサーカス』 解説によると、落語になってたり、わりと世界中に同じような話があるらしい。恐怖→拍子抜け→恐怖の緩急がすごくいい。ライオンの毛皮を着て猛獣格闘ショーというどうにもならねー話が、イヤすぎるオチにつながるのがおもしろすぎる。
『郵便局と蛇』 この短篇集で一番好きな話であり、コッパードといえばこれが真っ先に思い浮かぶ。世界を食い尽すので「審判の日」の前日まで封じられた蛇がいる湖の話を、田舎の郵便局で世間話のついでに聞いて、湖に行くと本当にその蛇がいるし、蛇に「今日は最後の審判の前日か?」と聞かれる。なんともいいようのないこのかんじ。
『うすのろサイモン』 うすのろが地上をさ迷いながら天国に行くための手段がエレベーターというのがすごくいい。そして、うすのろに外套を与えた学者が、外套に大金を入れたままだったのに気が付いてうすのろを追い掛ける理由が、自分の罪(大金)のせいでうすのろが天国に行けなかったら可哀想だからというのが素敵すぎる。『森の熊さん』みたいだ。
『若く美しい柳』 柳に恋をした電信柱が、やっと恋が実のって互いに触れ合うようになると「電線に枝が当たったらあぶなくね?」という理由で柳が伐り倒されてしまう。幻想と現実が並列するところが好き。
『辛子の野原』 女友達同士が、互いに知らずに同じ男に恋をしていて、互いの目に写っていた男の話をしながら反目しつつ、今は男がいなくなっていることを思い出す。かつての友達、知らぬ間の恋敵に向かって「あんたのことが好きだよ」という切なさ。
『ポリー・モーガン』 すべては思い込みで、幽霊も呪いもなかったのかもしれない。ただ、結果としては、叔母と恋人が死んでしまったのは現実に起きたことで、一人称は彼女に起きた「事実」しか語らないのだ。
『王女と太鼓』 君臨しながら統治できない、永遠に戴冠式を延期され、監禁されつづける王女。王冠の代わりに彼女に与えられたのが気が狂いそうな音を発する太鼓であり、そんな王女と家出少年が何故かボーイミーツガール。
『幼子は迷いけり』 何を与えても何をさせても無気力な息子は、別に呪いとか病気じゃなくてそうゆう息子なのだから仕方がない。息子の無気力っぷりに苛立ったり、息子の興味を惹くために与えたものについ夢中になってしまう両親がおもしろい。
『シオンへの行進』 あんまりピンと来なかった。