フラナリー・オコナー『フラナリー・オコナー全短篇』上 筑摩書房
- 作者: フラナリーオコナー,Flannery O'Conner,横山貞子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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黒人、キリスト教と、アメリカ南部のディープな習俗に根ざした作品は、いまいちなんだかよくわからないのだけれど、フラナリー・オコナーの作品は理解できないながらもすごく好き。だいたいサッパリわけわからんが。感想書き留めようにも、自分の感情の動きもよくわからないから、あらすじだけメモすることに。
『善人はなかなかいない』 フラナリー・オコナーといったらこの短篇を思い出す。平凡な家族が、新聞で読んだ脱獄犯に出会って、一家皆殺しになるというものすごい展開にビックリした。この短篇にこの題名というのがすごすぎ。
『河』 再洗礼派ってやつなのか? よくわからないけれど、なにも知らない子供が、なにも知らないなりにキリストの国に行こうとして河に流される展開は強烈すぎる。
『生きのこるために』 車を手に入れるために知恵遅れの娘と結婚する片腕の男。娘を置き去りにした男が、拾った少年に特に意味もなく口汚く罵られるのがおかしい。
『不意打ちの幸運』 痛むお腹を擦りながら階段を登り続ける女、兄弟姉妹の例を見て妊娠を嫌がっていた彼女の痛みの原因が懐妊だとしたら、どんな意味を汲み取ればいいんじゃろか。意味はわからんけど、好きな短篇。
『聖霊のやどる宮』 移動遊園地の見世物小屋のいかがわしさは、伝聞だから際立っていてすごくいい。
『人造黒人』 題名のインパクトはこれが一番だと言い切れる。アメリカの田舎町から見たら、大都会はこれほどわけのわからんものなのか。
『火の中の輪』 少年の悪戯で燃え上がる農園。農園の経営者から見たら、いつも不満を抱えているよいに見える少年がまったく理解不能なところが好き。
『旧敵との出逢い』 南軍の軍曹だったか将軍だったかもわからないぐらい呆けてしまった老人が、孫の卒業式に引っ張り出される。卒業式の群衆と過去の戦争がゴッチャになる老人の内面描写がすごくいい。
『田舎の善人』 哲学を学んだインテリ女性が、純朴そうな聖書売りに騙される。彼女が奪われたのは貞操ではなく、義足なのがすごくいい。
『強制追放者』 第二次大戦中、ナチスに迫害されたポーランド人がアメリカ南部の農園に来る。よく働くポーランド人が、農園から浮いた存在になっていく過程は、理不尽だけど納得せざるを得ない。
なんかこのポーランド人にキリストを重ねたくなるのは、うがちすぎ?
『ゼラニウム』 孤独な老人が、勝手に隣室のゼラニウムに感情移入してるのがおもしろい。
『床屋』 床屋でからかわれた大学教授が、スピーチ原稿まで作ってやりこめようとする必死さが嫌すぎ。
『オオヤマネコ』 なんかラテンアメリカちっくな幻想味があるような。
『収穫』 小説を書いてる作家が、最初はヒドイ扱いをしようとしてた登場人物と作品の中で平和な暮らしを始めてしまうからおそろしいぜ。てゆうか、スーパーに買い物に行ったら、その登場人物のことをすっかり忘れてしまうし。
『七面鳥』 せっかくの獲物を奪われてしまう少年。こうゆうのを起伏なく淡々と描いていけるのがオコナーのすごいところだと思う。
『列車』 オコナーの作品には、ろくなことにならないから余計なことするなよと言いたくなる登場人物がいるけれど、この短篇のヘイズはひどすぎる。目を背けたくなるけれど、つい最後まで読んでしまうふしぎ。