時をかける少女編集する

主人公の真琴がビックリするぐらい馬鹿でビックリしますね。タイムリープ能力を手に入れたら神にも悪魔にもなれるのに、彼女がやることといえば、「延々カラオケで歌い続ける」とか「小テストでいい点取る」とか「男友達の投げたり打ったりするボールの軌道を読む」とかなのでアホすぎる。せめて競馬年鑑を買って過去に戻るとかすればビフ・タンネン(『バック・トゥー・ザ・フューチャー』)に匹敵するぐらいの悪にはなれるのに。当然、タイムリープして転がった先には肥車完備ですが。

ところどころに「分岐」を匂わせる演出が好き。「理系と文系」「三叉路」「千昭と巧介」など、真琴がどれを選ぶのか。ってゆうか、基本的に真琴は「選ばない」ために選択肢を遡りまくりなんじゃよねー。誰も傷つけたくない、傷つきたくないんじゃよ?という青春街道大爆走(タイムリープによるリセットあり)は、どんどん収拾がつかなくなっていくのでした。「選ばない」ことを「選ぶ」ってたいへん。

「他人の恋愛には前向きだが、自分の恋愛には後ろ向き」とか、「変な小細工を弄して他人の恋愛を勝手に後押し」って、『アメリ』みたいじゃよね? 小細工に使うのがタイムリープであり、他人の恋愛フラグ立てるのにジャイアントスイング使うあたりがおフランスと日本の違いなのかー。そして、クリーム・ブリュレじゃなくてプリンだったりもする。

テンプラ大爆発事故や激切れ消火器スロー事件で、安易なタイムリープが思わぬ人たちに迷惑をかけることを知った真琴は、だんだん小細工の仕方がピタゴラスイッチになっていくのでおもしろすぎる。主人公にとっても視聴者にとっても既知の場面が、ささやかすぎる小細工(タイムリープ)によってどれだけ変化していくのか、またささやかだったはずの小細工がどれだけ大きな齟齬を引き起こしていくのかって、タイムリープものの見せ場じゃよねー。

夏が舞台でアホ丸出しタイムリープといえば、『サマータイムマシンブルース』を思い出さずにはいられない。糞暑いのに野球やってるところとか。

背景がすごくきれい。商店街の描写は、こっちは実写映画だけど『ラブ&ポップ』を思い出しりもした(『ラブ&ポップ』が実写なのにアニメよりなのかもしれないけど)。きれいすぎてやや違和感もある。学校とか、あまりにも人がいなさすぎて夏休みみたい。真琴の自宅は、『耳をすませば』レベルで夢も希望もない現実さが出てればもっとよかったのになー。