ダークマン

 「ダークマン」っていかにもアメコミのヒーロー然とした見た目だけれど、要は人工皮膚(時間制限つき)で他人になりすますことが出来て、あと、痛覚がないからちょっと痛みに強いってだけなんじゃよねー。浮浪者のような身なりで地道に仇敵の身辺調査をしたり、人工皮膚の改良を重ねたり、わりと地味。でも、そこがいい。
 ダークマン自身は火傷で爛れた顔を包帯で覆っていて、いわば顔がない状態。ゆえに、人工皮膚を使ってなりすます他人の顔が重要になってくる。ダークマン=ペイトンを酷い目に遭わせたギャングたちが揃いも揃って強烈なツラをしていてキャラクターが立っているのはこのためだったんじゃよねー。いかにも悪役然とした顔の胡散臭さが、ダークマンの人工皮膚という作り物の顔の胡散臭さとほどよくマッチングして、素顔のはずなのにダークマンなみの特殊メイクを施されているように見えてくるのがおもしろすぎる。
 ギャングのボスであるデュランは強烈だなー。一周回ってホントは善人なんじゃないのかしらと思えてくるぐらい悪い顔であり、悪い顔に相応しい悪ぶりが悪い。悪の定番アイテムといえば葉巻だけれど、葉巻カッター(正式名称は知らん)で他人の指をサクサク落とすから悪すぎる。指を切り落とすのは拷問であると同時に、落とした指は彼個人のコレクションにもなる。悪いなあ。
 ジュリーは事件のきっかけであり、ペイトンに瀕死の重傷を負わせてダークマンにしてしまっただけではなく、なんやかんやでダークマンをも窮地に陥れてしまうのだけれど、そうなったのは彼女のせいではあるがけっして彼女が悪いという流れにはなっていないところがおもしろいね。ジュリーは悪くないから、最後のダークマン=ペイトンとの別れがまた印象深くなっているみたい。
 音楽がダニー・エルフマンで、顔面に損傷を受けた男が復讐を誓って別人として裸一貫やり直すというと、ティム・バートンバットマン』を思い出すね。ってゆうか、やり直すのはヒーローのバットマンではなく、悪役のジョーカーなんだけれど。
 ラストシーンでダークマンが被ってた他人の顔って、『キャプテン・スーパーマーケット』の人じゃよね? 変なところでサービスしてるなー。