ヒドゥン

  80年代のB級映画の話をしてて、『ガバリン』と『クリッター』と『ヒドゥン』がゴッチャになってるっぽいので、確認。えーと、悪いピグモンが出てくるのが『ガバリン』で… 「それは『クリッター』です」 わかってるねんで?!

 人間に寄生して悪事を行い、バレると今の体を捨てて別の体に乗り移って逃げる化け物というよくあるパターンだけど、微妙に外しているところがおもしろいね。悪寄生生物はすごい勢いで犯罪犯しまくりであり(半日で5人殺すなんて当たり前)、ヘビメタが大好きでいつも大音量で鳴らし(レコード店の店員を撲殺してカセットを奪う)、フェラーリばっかり盗んで乗り回す。こいつ、隠れるつもりがまったくないと見た!

 そんな目立ちまくる悪寄生生物を追うのが、ベテランの腕利き刑事とヘナヘナしたFBIコンビというのがおもしろいね。突然やってきてなんだかよくわからない確信の下に凶悪犯を追うFBIと、それに戸惑うベテラン刑事。最初はFBIに反発しているけれど、彼の相棒と妻子がヤツに殺されたことを知ってからは少し距離が縮まる。

 FBIの正体も寄生生物だというのは見ていればすぐにわかるのだけれど、見せ方がおもしろい。挨拶がぎこちなかったり、ポルシェを乗り回していたり(値段は知らないという)、常識がなさすぎだからすぐに気がついてもおかしくはないのだけれど、カイル・マクラクランの外見に騙されてしまう。アルカセルツァーを渡されてボリボリ齧ったあとに、頭痛薬を水に溶かそうとしていても、カイル・マクラクランならしょうがないなあと変に納得してしまえるんじゃよねー。カイル・マクラクランってなんか浮世離れしていて、こうゆう真面目なのに変な役にはピッタリだなーと思った。カイル・マクラクランが変な捜査官役をしている『ツイン・ピークス』をもう一度見ようという気になった。

 次々に体(姿)を変える寄生生物という設定なのに、だれが乗り移られているかという『遊星からの物体X』的なサスペンスにまったく傾かないのがふしぎ。捜査中混乱しているベテラン刑事とFBI(自称)はともかくとして、観客には誰が寄生されているかすぐにわかるようになっている。観客を騙せそうな入れ替わり場面がいくつかあるのに、すごい勢いで悪を為す悪寄生生物には隠れようという意志が微塵もないので無駄なのでした。

 悪寄生生物は次々に体(役者)が変わるから単なる怪物で終わるかと思いきや、意外とキャラが立っていて楽しい。音楽やフェラーリ好きなところや、やたら銃火器に詳しくていつもハリネズミみたいに武装していたり。ってゆうか、欲望のままに悪いことをして目立ちまくりのくせに、大統領候補の議員の体を乗っ取って「この国を支配してやる」とか言うので頭悪すぎて楽しい。

 瀕死のベテラン刑事の体にFBIの中の寄生生物が乗り移るというラストは一見感動的だけれど、ベテラン刑事の妻子からすればSFホラー丸出しじゃないのかしらんと思った。パパなのにパパじゃない! 『ヒドゥン2』ってそうゆう話なんじゃろか。