バロン

 中学生のころ見たときは途中で寝ちゃった記憶があるので心配だったけど、寝るどころか最後まで興奮しっぱなしですごく楽しめたのでビックリしますね。
 オスマン帝国と戦争中のオーストリアのとある町(町はボロボロ、住民も兵士も傷だらけ)でほら吹き男爵の劇を上演中に、フラリとあらわれて「こんな劇は嘘っぱちだ!」と劇の進行を邪魔する老人。自分こそが本物のミュンヒハウゼン男爵であると名乗り、勝手に舞台に上がって真実の冒険を話し始める。
 劇団の演じる「ほら吹き男爵の冒険」の舞台セットがいかにもな舞台セットですごくいい。歯車で太陽が昇り、舞台の下でクランクを回すと波が起きる。ほら吹き男爵の大法螺を再現し、劇という法螺を支えるための舞台。そんな舞台の上に本物のミュンヒハウゼン男爵が立って彼自身の真実の冒険を話し始めれば、舞台のセットだったはずのものが本物に変わってしまうところがおもしろいね。狭い舞台に書割で作られた偽者のオスマン皇帝のハーレムが、豪華絢爛な本物のハーレムになる、その境目を埋めるバロンの自信満々な胡散臭さが大好き。
 首が飛んでしかるべき場面で景気よく首が飛ぶのが気持ちいい。やっぱり、おとぎ話だったら首のひとつやふたつは気持ちよく飛ばないとダメじゃよねー。首が飛んでも残酷ではなく爽快なところは、『スリーピー・ホロウ』みたい。
 おとぎ話の中の人物が現実にあらわれて苦境を救うところは、なんかグリフィス復活後の『ベルセルク』みたい。グリフィス=バロンで、超人的な部下たちがトルコっぽい軍隊を撃退するところとか。