ワンダとダイヤと優しい奴ら

 ワンダとダイヤはともかく、「優しい奴ら」って誰やのん?
 ワンダが冷徹にすべての男を手玉に取る性悪女だったら、この映画の笑いはほろ苦いブラック・ユーモアになっていたと思う。現にワンダが性悪な面しか見せていなかった前半までの笑いはかなり意地の悪いものに感じられた。でも、間抜けな男たちを手玉に取ってきたワンダにもちょっと変なところがあって(イタリア語とかロシア語とかを聞くと体が火照ってしまう)、利用するだけだった冴えない弁護士のアーチーをちょっと気に入ったあたりから、これまではワンダの掌の上にあった意地の悪いブラック・ユーモアが、ワンダも含めて全員が右往左往するドタバタコメディになったような気がして、腹の底から笑えるようになるのでふしぎ。
 三匹の犬を連れた老婆と、彼女の命を狙うケンのシーンが好き。ケンは老婆の命を狙うのに、何故かそのたびに失敗して犬が死ぬことになる。ケンは動物愛護家であり手違いで犬を殺すたびに大ショック、犬の葬儀にコッソリ参列しているところがおもしろすぎる。
 本編もおもしろかったけど、特典映像でカットしたシーンとその理由を説明しているところがおもしろい。単体で切り取ってみればかなりおもしろいシーンでも、映画の流れを殺したり冗長だったりするとカットしたというのは見比べれば納得できすぎる。老婆が心臓麻痺で死ぬシーンでは観客の笑いは止まらないのに、動物好きの男の前で彼の飼っている魚を次々に食べるという拷問のシーンでは観客がドン引きしてしまい、観客の気持ちが理解できずに困ったらしい。映画って難しいね。