ネクロノミカン

 ネクロノミコン(なんで日本語のタイトルはネクロノミカンなんじゃろか?)とラブクラフトが出てくるけれど、ラブクラフトの小説とはあんまり関係ないみたい。ラブクラフトの小説のシチュエーションとか設定だけ借りてきた、わりとありきたりなグチョヌルホラーオムニバス映画。クトゥルー神話とも接点はないっぽい。ニャルラトテップも出てこなかったでニャルラ。
 小説家ラブクラフトが、ある密教系寺院の奥深くに封印されているネクロノミコンを紐解いて、過去(未来も?)にネクロノミコンが関わった三つの陰惨な事件の顛末を調べるという構成はおもしろかった。ラブクラフト自身はネクロノミコンを読んでいるだけで三つの話には直接関わらないし、三つの話に接点もないという(一応ネクロノミコンはどの話にも出てくる)、『世にも奇妙な物語』みたいなユルユルな話。ネクロノミコンに書いてある話の中で、さらに手紙とか過去の話とかに潜り込んだりするところがなんとなくラブクラフトチック。
 ラブクラフトがハードボイルドな私立探偵だった『S.F.Xハードボイルド ラブクラフト』よりは実在のラブクラフトに近いのかなーと思ってみていたら、ラブクラフトが後生大事に持っていたステッキが仕込み杖だったのでずっこける。ラブクラフトが仕込み杖だなんて、江戸に黒豹がいるぐらいおかしい。
 せっかくラブクラフト本人を出すなら、もっと本人に即した設定にすればいいのに。魚介類が苦手とか、女装癖があるとか、甘いもの大好きとか。これで島田久作顔じゃなかったら立派な萌えキャラなんじゃが。