ジャズ大名

 要するに「ジャズやるべ」ってことじゃろ?と、微妙に時流を読み間違えるリトルおろかなわし。
 ジャズ+大名というインパクトだけで借りてみたので、どうせストーリーなんてないも同然だと思ってみたら、原作が筒井康隆であり、わりとちゃんとした(でも素っ頓狂な)ストーリーがあるのでビックリしますね。時は幕末、薩長と幕府が戦争をする中で、交通の要衝(屈指の難所でもある)の貧乏藩の藩主が、リンカーン奴隷解放令でアメリカから流れ流れてきた黒人ジャズプレイヤーたちと邂逅するというトンチキで楽しい映画。
 佐幕と勤皇で日本が真っ二つに割れているご時世に、交通の要衝にありながらすべてを投げ出している城内の人々の様子がおもしろいね。民の窮乏をすっかり忘れて地下にひきこもって延々と続くジャムセッション。地上では凄惨な戦が繰り広げられているのに、地下では黒人ジャズプレイヤーと日本の楽器のセッションをしている中に、ええじゃないか行列や坊さんが紛れ込んで大騒ぎに。地上の戦いからはぐれた官軍や賊軍も紛れ込んで、いったいどうなるのかと思ったら、そのまま終わってしまうのでおもしろすぎる。
 松枝姫は見た目はあんまりかわいくないけど、控えめながら冷静で的確なつっこみがよかった。そろばんで廊下をズサーと移動するのが似合っている。