仕立て屋の恋

 ギャワー。やっぱり、わいせつ罪で服役したことがあって、寂しさを娼婦で紛らわせながら、窓越しに覗きをするようなオッサンが、恋をするのは間違っているんじゃろかー。「笑うだろうが、君をすこしも恨んでないよ。ただ、死ぬほどせつないだけだ」 
 しかし、それでもなお、やっぱりオッサンはキモいと思った。レンガの写り込んだ窓にぼうっと浮かぶおっさんの白い顔は、『かまいたちの夜』のピンクのしおりになってからのシナリオで、シュプールの二階の窓から覗くのを真理が目撃するに違いないんじゃよ? 
 オッサンのキモさを糊塗することなく、キモいオッサンをキモいまま描写して、でもオッサンの気持ちを思うとやっぱりちょっぴりせつなくなるところが好き。衝撃のラストは当然行き着く末路でもあり、一瞬「このクソ女め!」と思わないでもないけれど、彼女がああしたのも理解できるし、彼女がオッサンよりも婚約者を選んからこそキモいオッサンがキモさの頂点を極める寸前で止まれたような気がする。オッサンの死後オッサンを執拗に疑っていた刑事が読むことになるオッサンの手紙は、非常にオッサンらしいキモい内容ですごくいい。