ロスト・ハイウェイ

 サッパリわけがわからなくてギャワー。ということもなくて、わけがわからないながらも、なんとなくなにが起きていたのかわかったような気がしないでもない。先に『マルホランド・ドライブ』を見ていたからじゃろかー。
 『マルホランド・ドライブ』と同じように、人を殺した罪悪感から逃れるために記憶を改竄しようとした人の話なのかなー。『マルホランド・ドライブ』の主人公のほうは、現実を忘れるために自分や他人の姿はそのままで役割のほうををいじくっていたけれど、『ロスト・ハイウェイ』のほうは、自分の姿をまったく他人にしてしまっているところが最大の違いかも。そして、自分が殺した妻をブルネットからブロンドにしているところが見た目におもしろいね。
 主人公はビデオが嫌いだと語っているけれど(記憶は自分だけのビデオだから、客観的なビデオは必要ない)、彼を追い詰めるのが毎朝自宅の前に置いてあるビデオの映像だったり、謎の男が撮影するビデオカメラだったりするところがおもしろい。主人公は必死に記憶を改竄し、妻やその他の人々の殺害をなかったことにしようとしているのだけれど、謎の男とビデオによってその企みは頓挫する。自分の姿を変えもう一度記憶の改竄を図るけれど、やはり謎の男とビデオは追ってきてけっきょく元の姿と殺人を思い出すハメになる。アントニオ・タブッキの短篇『夜、海あるいは距離』で、記憶を改竄しようとした老詩人がけっきょく失敗する原因が、その場にいるはずのない魚の唐突かつ執拗な存在だったことを思い出した。どんなに自分を偽ろうとも、自分だけは偽らざる記憶を知っているから、自分の記憶から逃れることができない。
 煽ってくるドライバーを車から引きずり降ろして交通事故の危険性を説教するヤクザがおもしろかった。正論すぎる。