ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ

 同じくガイ・リッチー監督作『スナッチ』と似たようなもんだと思って見たら、確かに似ていた。なんか役者もけっこう被ってるような気がする。でもまあそれぞれに魅力的であり、『スナッチ』は比較的ブラッド・ピットがかっこよくいいとこどりだったけれど、こっちはみんな均等にバカでよかった。あ、ビッグ・クリスは死ななかったし儲かったし、丸儲けか。
 別々のグループの思惑が互いを知らぬ間に錯綜して些細なズレや齟齬や思い違いでとんでもない結末に転がり込むところは、『パルプ・フィクション』とか『ファーゴ』みたいだけれど、『パルプ・フィクション』や『ファーゴ』がそれぞれ独自の魅力を持っているように、この映画もズレ方が独特でおもしろい。すごい悪党がいっぱい出てきて悪党らしく悪党らしい仕事ぶりなのに、なんだかボタンの掛け違いですごい勢いでみんな死んじゃうところが楽しいね。チンピラとも呼べない主人公四人組が、悪党大量殺害現場に二回も遭遇する羽目になるところが楽しい。真面目に悪党が悪事を働くのになんか変なのは、かっこいいあだ名のせいじゃろかー。「手斧のハリー。噂で聞いたことがある」「知っているのか、雷電!」とか、そんなノリ。もしくは、九大天王とか十傑集みたいな。かっこいいあだ名がついていて畏れられているくせに、死ぬときはあっさり死ぬし。
 どうでもいいような伏線がしっかり回収されていて好き。バーから火達磨で出てくる男はサラリと流されていてなんなんじゃろかと思っていたら、あとからアフロ黒人の残虐性を説明するエピソードで顛末がわかったり、空気のような存在感を持っている女の子が、ちょっとした隙に相手のブレンガンを奪ってぶっ放したり。
 郵便局強盗の二人組みは、最初はかっこ悪かったのに(アフロを銃で撃たれて髪形が変わったり)、最後は二丁拳銃でかっこよく銃撃戦をするのでビックリしますね。『私立探偵濱マイク』で、見た目は間抜けなのにすごくかっこよく松方弘樹と対決していた林家ペー・パー子を思い出した。
 あと、アル・カポネに木製バットで殴り殺されるよりも、手斧のハリーに30cmのゴム製ペニスで殴り殺されるほうがイヤだと思った。「手斧のハリー」とうあだ名の由来を説明するエピソードのはずなのに、ゴム製のペニスで死ぬまで殴るというところにハリーの残虐で粘着質な性格が浮き彫りにされているんじゃよねー(そうか?)
 あと、全体的にくすんだ色調なところが好み。色数が少ないと現実味が乏しくて、こんなアホな展開でも素直に許容してしまえる。マリファナ栽培場襲撃とか派手な銃撃戦はほとんど昼間に起きるのだけれど、くすんだ空の色のせいで真昼間とは思えないようなふしぎな雰囲気。