夜の大捜査線

 ギャワー! 主演:デンゼル・ワシントンかと思って見たら、なんと生まれる前の作品なのでビックリしますね。そんな昔から黒人主演の映画ってあったんだ、と思うのも差別なんじゃろか?
 南部の田舎町の殺人事件にちょっとしたきっかけ(誤認逮捕された)で関わることになった北部の敏腕刑事と、彼を煙たがりながらも腕は認めざるを得ない田舎の警察が、イガミ合いながら協力して事件を解決する話かと思ったら、微妙に違うのでビックリしますね。
 北部の凄腕刑事が黒人だったというのがこの映画のポイントじゃろか。みんなが黒人刑事バージルに冷たいのは、殺人事件に慣れていない田舎の警察そっちのけで捜査を進めていくからだと思って見ていたら、次第に事件の舞台である田舎町が綿花を栽培して黒人が収穫している典型的な保守的な田舎町だということがわかってきて納得する。なるほど、「あの刑事殺されるぞ」というのも冗談じゃないわけだ。実際襲われてるし。
 黒人刑事と白人署長は、協力しているようであんまり協力していないところがおもしろいね。バージルの危機に署長は助けに来たり、最初のころの差別丸出しな態度に比べれば多少は個人的な親愛の情が出てきているけれど、捜査の方針はまったく違う。この辺は嫌っているから方針が違うというよりも、署長としての意地だったのかなー。
 差別というのは、差別してやろうと思ってするのではなくて、当たり前だからそれを差別として意識しないんじゃろかー。バージルの捜査を阻むのは巨大な謎や陰謀ではなく、住人たちが当たり前に思っている黒人差別の意識なところがおもしろい。飲食店の主人が食べ物を出すのを拒否したり、若者がマナーを教えてやると襲ってきたり、警官でさえ白人女の裸は黒人には見せられないから巡回ルートを変えたり、黒人の前で妹の妊娠の話は出来ないと本気で言っていたり、ここまで来ると子供の屁理屈だなあと思う。屁理屈だけに理屈が通じないところがおそろしいのだけれど。
 市長や被害者の奥さんにバージルを引きとめるように言われた署長がヤケクソでおもしろい。「むかつく白人野郎どもを見返したくないのか?」 
 綿花を経営している金持ちが一見紳士的に見えて黒人差別剥き出しであり、侮辱されても冷静なバージルの尋問についブチ切れてバージルの頬を張ってしまうところがおもしろかった。すかさずカウンターで金持ちの頬を張るバージルにビックリし、泣きだしそうになるお金持ち。まさか奴隷に頬を張られるなんて思ってもいなかったんだろうなあ。