スティング

 『明日に向って撃て!』がおもしろかったので、同じ監督、同じ主演のを見てみることにする。ポール・ニューマンロバート・レッドフォードのコンビは、『明日に向って撃て!』では馬の合う相棒だったけれど、『スティング』では老獪な詐欺師と駆け出しのイカサマ師の師弟コンビを見事に演じていておもしろいね。
 本当にビックリするような大どんでん返しではないのだけれど、ときには準備万端で大掛かりな大芝居を打ったり、ときには即興の小手先テクニックですたこら逃げ出してみたりと大小さまざまな騙しがいろいろ仕掛けられているシナリオを、軽快な『エンターテイナー』の曲調に合わせてテンポよく見せていて楽しいね。
 主役二人ももちろん素晴らしいけれど、老獪な詐欺師であるゴンドーフの元に集う仲間の詐欺師の面々もすごくいい。偶然組織の金に手を出してしまったばかりに殺されてしまった仲間の仇を討つために集まった彼らは、復讐といっても相手を殺すことは考えていない。詐欺師に出来ることはカモのケツの毛まで毟ってやることであり、文字通りいっぱい食わせてやることが詐欺師の仕事なのだ。
 第二次世界大戦前のアメリカの街並みにウットリ。『ゴッドファーザー』風の陰影のついた街並みではなく、セピア調で懐かしいかんじの色合い。ロネガンを引っ掛けるための「有線」というテクニックはこの時代でしか通用しないものであり、馬鹿馬鹿しいまでに大仕掛け(カモを騙すために競馬の賭場を丸々ひとつでっち上げる)なところも楽しいね。
 駆け出し詐欺師のフッカーは、ロネガンの金に手をつけたために師匠を殺され自らもロネガンの放った殺し屋に追われながら、身分を偽って堂々とロネガン本人に近づいて騙しているところも好き。手品師と詐欺師に最も必要なのは、小手先のテクニックよりもまず糞度胸なんじゃろかー。