32話『山南脱走』

 新選組ベンチャー企業と考えると本当にわかりやすいなあ。創業のドタバタから成長期に入って、人材が増えるとともに創業時の仲間に居場所がなくなる人が出てくる。新しく入ってきたヤツ(伊東甲子太郎)に社内ででかい顔をされても反撃できず、移籍のことで坂本竜馬のところを訪ねたら会社が潰れちゃって不貞腐れているし、いよいよ社内にも社外にも居場所がなくなっちゃって打つ手のなくなった山南さんは「そうだ、江戸(実家)に帰ろう」と決心するのでした。発言力は奪っているが仲間としてそばにいてもらいたいというジレンマが、土方と山南を引き離しているところがおもしろいね。
 伊東が入ってきたことで、土方が山南の必要性を痛感するところがおもしろいね。伊東一派が入ってきた今こそ隊の結束をもう一度固めねばならず、その為には山南に伊東を抑えてもらいたい。しかし山南は新選組の中では自分が果たす役目は存在せず、居場所がないことを自覚してしまっている。
 いろいろ嫌なことがあって明里に当たる山南は、隊に話し相手がいないから、明里に日本史を教えていたんじゃろか。寂しいなあ。そんな二人のテーマソングは筋肉少女帯『香菜、頭を良くしてあげよう』に決定。
 伊東甲子太郎は「最初は近藤たちと足並みをそろえる」と言っておきながら、初っ端から胡散臭い策謀を巡らせる気が満々なので変だ。百姓出身の土方を舐めきっていると考えるのが適当なんだろうけれど、やる気十分なところを隠そうともしないところは馬鹿丸出しに見えないこともない。あと、伊東一派に芹沢派の野口みたいなのがいたような気がしたのは気のせいか? オープニングの出演者をちゃんと見ておけばよかった。
 蔦山処断に関しては、近藤は土方に激怒していたけれど、永倉に関しては描写がないので謎。山南といっしょに脱走しててもおかしくないような気がしたんだけれど、永倉は近藤との個人的な友情を確かめられれば満足だったんじゃろか。
 捨助桂小五郎の使いっぱしりになるというのはなんか変なかんじがしていたのだけれど、捨助が「天狗」と呼ばれているところで合点がいった。なるほど、鞍馬天狗か。ちゃんと覆面してたし。
 先週の予告で気になっていた永倉と原田の喧嘩に見事なオチがついていておもしろいね。てっきり隊内の不和の結果かと思っていたら、山南を逃がすための茶番だったのね。こうゆう嘘臭い予告の作り方は大好きだ。