カリガリ博士

 人間はちゃんと普通の服装をしているのに、背景が書割っぽかったり、建物が妙に歪んで変な形だったりしておもしろい。舞台芸術的とゆうかスタジオ内撮影的とゆうか、等身大の箱庭の中にいるみたいに作り物めいていて、NHK教育でやっている子供向けの教育番組の背景のようなどこか狂ったディフォルメを施された街並みだけれど、白黒だからあんまり胡散臭く感じないのかも。変な街並みなのは精神病院に入院している患者の妄想というオチだからだけれど、そうゆう説明抜きでも、変な街の中を普通の格好をした人たちがうろちょろしているのを見ているだけでも楽しめた。これがドイツ表現主義ってヤツなんじゃろかー。精神分析と深く結びついていたり、頽廃的だからとナチスに弾圧されたのもわからんでもない。
 映像は美しいけれど、話的はけっこうイヤな話なのに、BGMがわりと楽しげなジャズ調でビックリしますね。でも変な街並みには合ってたと思う。
 カリガリ博士ってどこかで見た覚えがあるなーと思ったら、ドナルド・バーセルミの短篇集に『帰れ、カリガリ博士』というのがあったっけ。ひっぱりだしたら表紙に『カリガリ博士』が使われていた。でも別に『カリガリ博士』とはなんの関係もないんじゃよね。