マッハ!!!!!!!!

 ファンデーションは使ってません!みたいな予告編を見て、てっきりファンデーションを使う金がないような低予算映画だと思い込んで見に行ったら、カーチェイスはあるは、爆発はあるは、けっこうお金がかかった映画だったのでビックリしますね。ファンデーション(CGやワイヤーアクション)を使ってないのは、素顔(スタント無しのアクション)に自信があるからなんじゃろかー。その自信を認めざるを得ないだけの怒涛のアクションの連続に圧倒される。
 いろんな流派の敵と戦うところもおもしろいけれど(流派と言うか、とりあえず手当たり次第になんでもかんでも投げつける人がおもしろかった。ネオンとか電線も武器にしてるし)、街中をひたすら逃げ回るシーンがすごくいい。ムエタイというよりも、トニー・ジャーが体術のすべてを尽くして、無駄に華麗に様々な障害物を避けて駆け抜けていくところが爽快でよかった。走ってる車の下を足を広げてズサーと潜り抜ける技は、『からくりサーカス』の加藤鳴海がやってた『長イスの下をくぐる』ってやつじゃろかー。あんまりムエタイって知らないんだけど(『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』ぐらい?)、純ムエタイじゃなくて、ちょっとカンフーで味付けしているような気がした。
 金がかかってるし、命もかけているというかんじで、全体的に体を張って痛い場面が多い。冒頭の大木早登り競争からして、けっこう高いところからガンガン落ちていて、途中枝に背中ぶつけててかなり痛そう。無茶なアクションをスタント無しでやってるトニー・ジャーもすごいけれど、トニー・ジャーの技を受ける他の人たちも大変だなー。すごい飛び膝蹴りを受けて明らかに首がヤバイ方向に曲がっちゃってる人がいた。膝や蹴りもヤバイけれど、肘が最もヤバイ。空高く飛び、全体重とともにあの勢いで脳天に肘を叩き込まれたら、頭蓋骨が割れる。トニー・ジャーの肘落としは、モズグス様に聖書で殴られるよりも痛い。たぶん何人か死んでる。トニー・ジャーも燃えたり落ちたり殴られたり轢かれたりして何回か死んでる。もう残機は少ないと見た。
 往年のジャッキー・チェンの映画を思わせる、という評価は納得できる。エンディングでNG集(笑ってるけど、ひとつ間違えば死んじゃうようなやつ)にあわせてタイ語の歌が流れるところとか、『プロジェクトA』を思い出さずにはいられない。
 ただ、ジャッキー・チェンの往年の娯楽カンフー映画だと思ってみていると、仏像は取り返したのになんか嫌なオチでちょっとビックリ。仏教的虚無感なんじゃろかー。目標を達成した主役の出てこないエンディングというのもなんか変なかんじ。
 悪役が最後まで仏像の首を返さず、かといってどこぞの海に捨ててしまうことも粉々に壊すこともなく持っていたのは、仏像の首が呪いのアイテムだからだと思った。それをすてるなんてとんでもない! 天罰覿面みたいな最期のシーンとか日照りが続いている村とか、やってることはありがたい仏像の功徳とゆうよりも、金星から来た魔王尊か祟り神の所業じゃろ?