明日に向って撃て!

 高橋源一郎優雅で感傷的な日本野球』の登場人物としてしか知らないブッチ・キャシディサンダンス・キッドだけど、『優雅で感傷的な日本野球』の中で野球チーム「テキサス・ガンマンズ」のキャッチャーがブッチで、ピッチャーがサンダンス・キッドだというのは、この映画を見れば納得できすぎる。映画のブッチはもうちょっとだけ賢くて、もうちょっとだけ間抜けだけれど。この映画も最後はボリビア国軍との撃ち合いじゃなくて、「アングリー・ハングリー・インディアンズ」との野球にすればよかったのに。軍隊に囲まれて絶体絶命のピンチに「次はオーストラリアに行こう」と相棒に言えるのはキャッチャーだけだ。なんせオーストラリアはボリビアと違って英語が通じるからね。銀行も襲いやすい。
 長くコンビを組んでいるくせに最近まで互いの本名を知らなかったり、追っ手に迫られて河に飛び込もうというときに「泳げねえんだ!」とサンダンス・キッドが必死な顔で告白したり、ボリビアに来て銀行を襲う間際になってブッチがスペイン語を話せるのが嘘だとわかったり、親友なんてちゃちな関係じゃない、ただウマが合ったから信頼してるし一緒にいるだけという二人のコンビは楽しい。アメリカを追われてボリビアへと落ち延びて、山賊としてそこで最後を迎えるならず者ふたりの半生が、ちっとも悲壮感がないところがいいなあと思った。
 給料泥棒をホールドアップさせて一触即発というときになって、ブッチが「人を撃ったことがない」というところが好き。散々列車強盗や銀行強盗を指揮しておいてこの有様。口先三寸ここに極まれり。やはりキャッチャー向きだ。
 『スティング』も同じキャストとスタッフでおもしろそうだから、レンタルにあったら借りてみてみよう。西部劇いいなあ。『クイック&デッド』以来の勢いではまりそうだ。