ウイリアム・ペン・デュボア『二十一の気球』 講談社青い鳥文庫

二十一の気球 (講談社 青い鳥文庫)

二十一の気球 (講談社 青い鳥文庫)

子供のころに夢中になって何度も読み返したのを、ものすごく久々に読んだ。話とか展開とか、だいたい覚えていたけれど、それでもおもしろい。

てゆうか、ここまで覚えてるのは、すぐ忘れる自分には珍しいので、三つ子の魂百まで踊り忘れずだと思った。

気球に乗ってノンビリ旅行するはずが、なぜか世界一周を最速で達成してしまうまでの顛末。非常にトンチキな話を支えるのは、歴史的事実も盛り込んだ妙に凝った考証と素敵すぎる登場人物。ヴェルヌ『月世界旅行』みたいに詳注版があったら楽しい。

シャーマン教授が気球を偏愛しているのは、すなわち作者デュボアの偏愛の証でもある。実現は不可能にしても、「こんなこと出来たらいいな」「これならどうだろう」とゆう可能性を詰め込んだ『地球儀号』のディテールがすごくいい。気球の家から釣り糸で吊り下げて洗濯や洗い物をするとゆう絵面が楽しい。

シャーマン教授の冒険も楽しいけれど、シャーマン教授が救出されて、冒険の顛末を語るためにアメリカ西部探検家協会に戻るまでのお祭り騒ぎが好き。沈黙を守るシャーマン教授に対して、なぜか大統領専用列車が用意されてしまう。