ディーノ・ブッツァーティ『シチリア王国を征服したクマ王国の物語』 福音館文庫

●ディーノ・ブッツァーティシチリア王国を征服したクマ王国の物語』 福音館文庫

シチリアを征服したクマ王国の物語 (福音館文庫 物語)

シチリアを征服したクマ王国の物語 (福音館文庫 物語)

ブッツァーティの派手さはないが上質なイヤ話が大好きなので(あんまりいっぺんに読むと胸焼けするが)、ブッツァーティが書いているというだけで買ったのだけれど、表紙から挿し絵から絵がかわいすぎる。あ〜クマちゃん、あ〜クマちゃん、か〜いーよーか〜いー。

つぶらな瞳のクマちゃんたちがページいっぱいにそれぞれが好き勝手なことをしており、表情はクマだから希薄だけれど、動きが愛らしすぎ。ブッツァーティって絵の才能もあったのね。

クマが主役なのでクマたちが素晴らしいのは当たり前なのだけれど(二足歩行で喋りはするが、クマはクマなので、揃いも揃ってプーさんみたい)、人間だとデ・アンブロジイース教授が好き。魔法を出し惜しんだり、クマを罠にかけようとしたり、なのに可哀想なクマに同情して大事な魔法を使ってしまったり。とても人間らしい素晴らしい脇役っぷり。挿し絵の真ん中ではなく片隅に、とんでもなくノッポのシルクハットを被ったシルエットという慎ましい立ち位置が教授には相応しすぎ。

登場人物紹介がフィニィ『ラーオ博士のサーカス』みたいで好き。仄めかし、期待を煽る謎めいたところがすごくいい。