押井守/岡部いさく『戦争のリアル』 エンターブレイン

戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA

戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA

押井守がなんかいろいろぐちゃぐちゃ話していると、最初はまったく理論的に筋道立った話をしていたはずが、いつの間にか押井守の願望垂れ流しになってしまうからおそろしいぜ。あっるぇ〜、おっかしいにゃーこれが押井守の言うところの「演出の詐術」ってやつじゃろか。

現実の現代日本に相応しい軍隊を語ろうと、小銃から始めて核武装、あるべき装備とその運用思想まで細かいことを話しているうちに、いつの間にか「押井守の考えた妄想自衛隊」になってしまう。もっとも現実的であるべき軍隊が、自らの拠って立つべき「現実」を見失い、己の妄想に沈んでゆく。

「目的を持たない軍隊はやがて自滅する」という押井守がかつて提示したテーゼは、「軍隊が目的を持たないなら、軍隊が目的そのものになればいいじゃない」という、ヤケクソだがヤケクソなだけに妙に説得力のある「現実」に取って代わられる。「戦争の現実」を把握しようとした人々は、ひとつの現実の裏にあるおびただしい「戦争の妄想」に邪魔されて「現実」がなんなのかがサッパリわからない。