澁澤龍彦『フローラ逍遙』 平凡社ライブラリー

フローラ逍遥

フローラ逍遥

シブタツ読むの久々だにゃー。花々の華麗な図版に惹かれてずっと気になってたのを、ちくさ正文館で他の本を買ったついでについウッカリ。今も反省していない。

25種類の花々それぞれに対して、澁澤龍彦が徒然なるままに筆を遊ばせるというスタイルが気持ちいい。現実の花の生態や分類に関する言及が、文献や伝説の中での花々に思いが飛び、自宅の庭にある花々の想い出に辿り着く。この自由奔放自由自在な話の飛びっぷりが楽しすぎるから澁澤龍彦を読むんじゃよねー。シブタツの言ってることが正しいか正しくないかなんてどうでもよくて、想像力と創造力、知識と感受性が触手を伸ばし絡まり合った先に出来る結び目が素敵すぎる。学問的な合否などどーでもよく、知識(記憶)の連なりの果ての果て、連想と思い入れから見える花々の姿が気持ちよい。

収録されている花々の姿が、すべて写真ではなく図版なのがすごくいい。すべて実在の花々なのに、シブタツが伝説や想い出を絡めて記述すればそれは想像上の生き物に限りなく近しくなる。華々しく不可思議な花の姿は現実を越えてしまい、なんだかレオ・レオーニ平行植物』のような彼岸の境を彷徨しすぎ。

本読んでると、わりとよく出てくるけどなんだかわからん植物が出て来るけど、澁澤龍彦にもそうゆうのがあったんだとわかったのが楽しい。合歓ってこんな花なんだ。ハシバミの実がわりとドングリだったことにビックリしたことを思い出すリトルおろかなわし。

『菊』のところでやらかすかなーと思ってたら、〆で案の定「菊座」とかいらんことを書くからおそろしいぜ。澁澤訳のサドでいらん言葉をいっぱい憶えた。新鉢を割ったり、埒を開けたり。