機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者

 上下10歳ほどの年齢差のZ世代6人で。前日、学生の知人に知らないことを前提で見に行くことを話したら、「Zガンダム知ってますよ。スパロボとかGジェネで」と軽く言われてショックを隠しきれないオッサンが今旅立つ。

 小学生のころ本放送を見て、学生のときに再放送で見て、2,3年前に先輩からLDを借りて見直して、その上でのZの印象って、けっきょくティターンズエゥーゴの戦争っつっても連邦軍の内戦ってゆうか主導権争いのいざこざじゃろ? 一年戦争に比べると規模が小さくて盛り上がりに欠けるんじゃよねー。嫌いじゃないけど思い入れもないという微妙な立ち位置で見に行ったのだけれど、おもしろすぎるのでビックリしますね。時間の制約もあるとはいえ、戦闘中心のスピーディーな編集にグイグイ引き込まれてしまう。ってゆうか、戦闘時にあの曲が流れると高揚感を隠し切れないリトルおろかなわし。

 主役のカミーユが戦争に巻き込まれる事情を最低限の説明だけにカットしてでも、クワトロ大尉=シャア・アズナブルと旧ホワイトベースクルーの関係に焦点を当てているのがスゴクイイ。旧ホワイトベースのクルーであるハヤトやカイは、クワトロ大尉がシャアであることに気がつきながらもティターンズを倒すために彼をクワトロ大尉として遇している。クワトロにしても、正体が知れていることは百も承知でシャアではなくクワトロを演じつづける。ファーストガンダムの続編というよりも、一年戦争からの絶ちがたい因縁めいた人間関係が『逆襲のシャア』大好きっコのハートをガッチリ捕らえて離しやしなんじゃよ?

 そして、他の旧ホワイトベースクルーとクワトロ大尉が大人の判断で共闘する中、どうしても互いを意識してしまうアムロとシャアの確執がより鮮明になっているところがおもしろすぎる。『逆襲のシャア』ではアムロが成熟しいているとゆうか醒めていて、いつまでも過去に拘りつづけるシャアの一人相撲ばかりが目に入ってしまうのだけれども(だが、そこが『逆シャア』の最大の魅力にもなっている)、『Zガンダム』のときだと二人がまだ同じ過去の燻りを共有しているんじゃよねー。テレビ版では不完全燃焼だった二人の確執に、映画ではもっと深く切り込んでいくんじゃろかー。別の形で『逆襲のシャア』を見られるのかなー。

 尺が短いからか、各キャラクターの描写がより端的に鮮明に濃縮されていておもしろいね。いきなりブライトを殴るバスク・オムの横暴さや、最初っからへタレ全開のジェリドとか。テレビ版を見直したらかなり印象が変わるような気がする。特にジェリドはありとあらゆる人からわりと公然とへタレ扱いされており、ライラの批評は的を射すぎ。「ジェリド、あんたには無理だ」ってそのまんますぎる。

 いっしょに見に行った6人の間でギャプランアッシマーがどっちがかっこよかったかで意見が別れておもしろかった。ギャプランはデザインが良いしパイロットのロザミア・バタムを足せば魅力的なのは勿論なんだけれど、あんな不思議飛行物体をあそこまでかっこよく演出で見せているのは神業だと思うのでぼくはアッシマーに軍配を上げたい。アッシマーの半分はブラン・ブルタークのもみ上げから出来ています。ブラン・ブルタークアッシマーのかっこよさを見ていると、ヤザンの新作映像が楽しみで仕方がない。

 旧作映像と新作映像は明らかに違うのに、見ているうちにあんまり違和感を感じなくなるので不思議。新旧の映像がわりと頻繁に入れ替わるように構成されているというのもあるのだけれど、旧作映像にひと手間加えていたり(爆発シーンにちょっと描き加えているみたい)、新作映像に旧作映像をはめ込んだり(エマに30バンチ事件を説明するシーン)、変な混ぜ方をしていておもしろいね。新作映像は映画の画面サイズに合わせて構図が取ってあって、そこにテレビ版のテレビサイズの映像を映画サイズにトリミングした映像を違和感なく編集でつなげるという大変そうなこともさらりとやっているみたい。

 元々エゥーゴの制服はノースリーブかつぱっつんぱっつんでエロいと思っていたが、新作映像でやはりエロすぎることがわかった。どれくらいエロいかというと、寝返ってエゥーゴの制服を着たエマの尻をさっそくクワトロが撫で回すぐらいエロい。

 ロザミーが明らかに年齢下方修正を受けておりやや不満。テレビ版の、年上なのに妹キャラという時代を先取りしすぎたトンチキな設定が大好きだったゆえに。新作映像で身体検査があるかと思うともう我慢できない。

 フラウ・ボウは声優が歳を取っていいかんじにおばさんになっていてよかった。それに引き換え、ハヤトはかっこよすぎる。あんなの「ド、ドムが来る…」とかうなされてフラウの同情を買っていたハヤトじゃないやい。

 旧作映像を使用しているシーンでもかなりセリフに改変が加えられていたりとか、シチュエーションがテレビ版と違っていたりしたらしい。Zガンダムに異様に思い入れのある先輩といっしょに見に行ったおかげでその辺の違いをいろいろ確かめられてよかった。オーディオコメンタリーがわりですか。「マニヤのことには先達はあらまほしきことなりっちゃ」 ラム先生口調の吉田兼好先生!

 あと、『星を継ぐ者』(J・P・ホーガン)『恋人たち』(P・J・ファーマー)とSF小説からサブタイトルが取られているので、3のサブタイトルは『発狂する宇宙』(フレドリック・ブラウン)に違いないんじゃよ? 読んでないけど自信満々。
 追記。『発狂する宇宙』はわりと多数派の意見みたいなので、ちょっと捻ってみよう。『さあ、きちがいになりなさい』とかどうか?(捻ってないうえに、またフレドリック・ブラウンなうえに、やっぱり読んでねえ)