妖怪ハンター ヒルコ

 森茉莉のエッセイを読んでいたら、『太陽を盗んだ男』や『魔界転生』の沢田研二を褒めていて、そういえば『妖怪ハンター ヒルコ』の沢田研二もなかなか味があってよかったような気がするけれどかなり以前に深夜に放映してたのを見ただけなので、せっかくだし借りてみた。
 おぼろげな記憶の中でもかなりチープな映画だったけれど、見直すと記憶と違わぬチープさにほどよく安心。日本映画で特殊メイクとか特殊効果が使ってあると、どれもこれも子供向けの朝の特撮番組みたいになっちゃうんじゃよねー。なんで古代遺跡とか洞窟とか石造りのセットはどれも同じに見えるんじゃろかー。
 でも、チープだからといってつまらないわけじゃなくて、謎の妖怪に襲われて逃げ惑って事態がめまぐるしく推移していくというこの映画のスピード感にはこれぐらいのチープさが心地よい。古墳でヒルコを封印するシーンが印象に残っていたのだけれど、映画の大半は田舎の学校の中を逃げ回るシーンから出来ていることにビックリ。ただ逃げ回るだけじゃなくて、自転車で疾走しているのが楽しいね。
 この映画の沢田研二もいい味出してるなー。冒頭、遺跡の発掘現場に自前の機械を持ち込んで呆けたような笑顔で作業に勤しむ沢田研二は、異端の学説で学会を追われたボンクラ学者というキャラクターを見事に表現していて大好き。妖怪探知機をはじめとする道具一式を持ち込んで頼れる人間なのかと思いきや、始終テンパっていてせっかくの機械を持て余し、妖怪が近づくと「キャー」と悲鳴を上げて逃げ惑うわ、興奮すると声が裏返ってしまうわ、トランクいっぱいに機械を持ち込んでいたのに最終的にはキンチョールとバールで戦う羽目になるわ、へタレだけれど一生懸命な学者バカを好演している。
 話したこともない好きな女の子が、首だけの妖怪になって追いかけてくるというシチュエーションはかなりショッキングだなー。匣に隙間なくみつしり詰まって「ほう」と鈴でも転がすやうな聲を出すならまだしも、多脚式ですごい勢いでシャカシャカ走り回り、あまつさえ羽根が生えて空を飛ぶからたまんねー。リメイクするとしたら栗山千明が演じるんじゃろかー。
 竹中直人の顔芸はいつ見てもおもしろいなー。乗っ取られて首だけになってしまう役だなんて、竹中直人のためにあるようなもんじゃよねー。ヒルコとの葛藤を顔だけで演技しているシーンは笑いながら怒る人みたいだ。