不思議の国のアリス アリス・イン・ワンダーランド

 テニエルの挿絵のビジュアルをわりと尊重して映画化してあっておもしろい。キチガイ帽子屋とか、トゥイードゥルディーとトゥイードゥルダムとか、挿絵そのままの人をどうやって見つけてきたんじゃろかー。実写映画版『ストリートファイター』でいったら、ザンギエフとキャミーくらい似てる。そして、チェシャ猫がウーピー・ゴールドバーグというのが、この映画最高のキャスティングだと言い切れる。チェシャ猫のニヤニヤ笑いをウーピーにやらせようと考えて実行してしまっただけで価値がある。
 わりと『不思議の国のアリス』に忠実に作ってあるけれど、白の騎士とかトゥイードゥルディーとトゥイードゥルダムとか、ところどころで『鏡の国のアリス』の要素が入っているのは賛否が分かれそう。テニエルの挿絵そのままの姿が動くのが見れたからまあいいか。どうせならジャバウォッキーも出して欲しかったけど。
 アリスが川遊びをするという始まり方ではなく、ちょっとしたパーティーで歌を披露するのがイヤで家を飛び出したところから始まるという変更点が、映画の進行に重要な意味を与えていておもしろい。原作『不思議の国のアリス』でアリスが出会う様々な人々は、アリスの行く手に立ちふさがって変な歌を好き勝手歌ってアリスの手助けはしないのだけれど、映画ではアリスの前で歌うことでアリスが人前で歌う勇気が出るように励ますようになっている(アリスの歌を聞きに来たお客さんが、不思議の国の住人たちに姿を変えている)。最後の裁判のシーンも、アリスが裁判という場所でちゃんと喋るための試練の場所になっているし。ハチャメチャナンセンスな『不思議の国のアリス』をそのまま手を加えずに映画にするとものすごいドラッグムービーになってしまうので手堅く脚色しているなーと感心する反面、原作のなにがどうなるかわからないハチャメチャさがスポイルされて映画という枠組みにあわせて剪定されてしまっているようでやや残念なような気もする。
 白ウサギとかヤマネとか陪審員とか針ネズミとか、モコモコした生き物のマペットがかわいかった。