49話『愛しき友よ』

 先週は盛り上がったところで録画が切れてかなりしょんぼりもしたけれど、見れたからいいや。再放送万歳。
 死を待つ人間の一日を追うという構成は、山南切腹、河合切腹につづいて三回目だけれど、それぞれに違う味わいがあっておもしろいね。座して死を待つ近藤は黙して語らず、近藤の周囲にいた人たちがそれぞれにとっての近藤勇という人間のことを考えていくところがおもしろい。近藤に文句をつけていいのは苦楽を共にした自分だけだという永倉の言い分は、勝手だけどなんかわかるなあ。『新選組!』にいちゃもんをつけられるのは一年間ずっと見てきた人だけであって、見もしないで文句言うやつに腹が立つようなものなんじゃろかー。
 黙然と座っている近藤のところに子供が迷い込む場面が好き。こぶしを口に入れるという近藤の特技をここで使うのがうますぎる。無表情でやるところがすごくいいね。なにも語らず内面を窺わせない近藤が有馬藤太を呼んだ理由を考えるとおもしろい。有馬を呼んでどうしたかったのかはわからなかったけど、きっと娘のことを思い出してなにか言伝を頼もうとしたんだろうなーと思わせてくれるところが好き。
 武士よりも武士らしくを目指しながら切腹が許されなかった近藤のことを、近藤を死地に追いやった勝が「死に様より生き様を見てやれ」というところが好き。助命嘆願に訪れた土方に、近藤は死に損なった徳川将軍の身代わりになって死ぬのだと説き、土方をも死地に追いやるところもなんかいいなー。身も蓋もないひどい事を言ってるようだけど、止まれなかった近藤たちのことを一番よく理解して彼らに相応しい花道を用意してあげる勝の心意気が憎い。
 すっかり終わったと思っていた大村達尾の話が実は続いていてギャワー。すっかり忘れていた脇役のその後を垣間見せてくれると、これで物語は終わるけれど彼らは彼らのその後の人生を生きていくことがわかってうれしいね。近藤の死で新選組は終わるけれど、いい意味で「彼らの戦いは、今はじまったばかりだ!」となっているところがすごくいい。
 尾形はこの後に及んで抜けるので中途半端というか、わりと最初のほうからいたけど影が薄いし、島田の言うように「最後まで馴染めない人」だったけれど、刑場に来ているのでビックリしますね。なるほど、彼は山南から新選組を託されたから距離を置いて見守っていたのか。原田が騒ぎを起こして遁走したときの破顔一笑で急に印象が変わった。
 「尽忠報国の志、あっぱれなり!」とう掛け声は原田のものだったけれど、なんか芹沢の影も見てしまうんじゃよねー。尾形が山南の代理だと考えれば、芹沢と山南も近藤に会いにきたのかもしれない。
 捨助とお孝の死は意外だった。特に捨助は、土方について五稜郭に行くものだとばかり思い込んでいたから、近藤を助けるために斬り込んで壮絶な討ち死にはビックリしますね。古株の隊士のような顔で突撃するし、「待ってろよ!」と言いつつ近藤より先に死んじゃうところは捨助らしいかも。新しい道をそれぞれ生きていく隊士たちの代わりに新選組として死んで行くのは、架空の登場人物にしか出来ない役割なんじゃよねー。こんなスタンドプレイは捨助以外には許されないけれど。
 斉藤が容保から刀を受け取る場面がいいなー。最初は畏れ多いと遠慮していたのに、近藤に渡すはずだった虎徹だと言われると受け取ってしまう斉藤。名刀ということもあるけれど、やっぱり虎徹=近藤だからじゃろかー。その刀を背負い、官軍に「会津藩御預、新選組三番組組長、斉藤一」と見得を切っている斉藤を見ていると、近藤の首を取り返してから会津戦争に赴くまでこれだけ続編が作れそうじゃよね。