47話『再会』

 榎本武揚がよほど羨ましかったのか、さっそく洋服を手に入れてキメキメの土方がかっこいい。洋服の下腹部に注目、小便をするときの仕組みに注意して観察しよう。「俺は形から入るんだ」とバッサリ切った髪を一昔前のヤンキーのような仕草で気にしながらおっしゃっておられたが、なんで金髪に染めてないのかとか、声がかわしまりのじゃないのかとか、そういうようなことが言いてえ(『行殺☆新選組』のやりすぎ)。
 勝海舟と近藤のやり取りがすごくいいね。前回慶喜の前で戦力にならないと言い捨てた近藤たち新選組を褒め上げる勝は、兵をもらえれば江戸市中の決戦で必ず勝つと豪語する近藤たちに甲州へ行くように促す。城を与えるという口実での厄介払いであり「永遠に厄介者かな? 新選組は」という救いようのない扱いかと思ったら、そのことを近藤が承知していることを、勝もまた承知しているところが悲しいね。なにもかもわかった上でそうしなければならないという雁字搦めが歴史なんじゃろかー。城もらって旗本になってイヤッホー!と素直に喜ぶのは相当なバカだけだろうし。
 多摩に帰るところは「再会」というサブタイトルに相応しい展開だなー。療養中の沖田が近藤たち一向の前に姿をあらわすところとか、歓迎会のドンチャン騒ぎとか、近藤たちが浪士隊として京都に旅立ったときの逆回しじゃよねー。前半に多摩時代を丁寧に描いていたことが活かされてすごくいい。そして、みんなの暖かい歓迎ムードの中で、土方が昔の恋人であるお琴の元を訪れて、冷たい現実を突きつけられるところがうますぎる。お琴に京都での5年間を全否定され悄然としている土方に、近藤が「俺たちはとんでもなく遠くに来てしまった」と述懐するところが好き。京都ではなく多摩で、自分たちがすっかり変わってしまったことを思い知る。
 剣を以って立ち塞がる者があればこれを斬ってきた新選組だけれど、銃を以って立ち塞がるものにはどうしようもないところが悲しすぎる。武力によってのみ忠義を果たせるはずなのに、牙を抜かれ主人を見失って迷走している。すっかり負け戦の雰囲気の中で永倉と原田が抜けるところも、近藤の下に徐々に人が集まってきた序盤の逆回しみたい。近藤の人柄に魅かれて集まってきた人たちが、近藤の変わりように嫌気が差して去ってゆく。永倉を引きとめようとする近藤が思わず「切腹だぞ!」と口走ってしまうところが悲しいね。あれほど嫌がっていた法度、すでに効果を失っている法度で仲間を縛ろうとする。
 次々に去ってゆく隊士たちを見て、感情を抑えていた斉藤が旗を持って吠えるところは恥ずかしいけれど、なんか好き。今日の今日までやってきた事だぞ。くだらないなんて悲しいこと言うなよ! みんな立派だよ! 歴史の教科書に載るくらい立派だよ! たぶん朝敵とか賊軍として。