ナインスゲート

 とくにすごく盛り上がったりするわけでもないのに2時間強飽きずに見られたのは、よく出来た映画だからじゃろかー。原作読んだことないけど、たぶん原作のエッセンスを漏らさずに映画化しているんだろうなーと思わせるような端正な雰囲気。深夜にテレビで流れてたら、ついついダラダラと最後まで見ちゃいそう。褒めてるのか貶してるのかわからない感想だけれど、わりと好きな類の映画だと思う。
 パッケージのジョニー・デップ久米宏みたいだなあと思った。あと、こんなに気絶しまくるデップさんは『スリーピー・ホロウ』以来じゃろかー。
 悪魔本マニヤのバルカンがすごすぎる。黒魔術愛好家たちが黒いローブとか用意して雰囲気満点で黒魔術してるところにスーツでスタスタ乗り込んできて、「変な格好なんですなあ、きみたち」とか言い出すのでビックリしますね。黒いローブ着ている人たちが気の毒すぎる。言ってみれば、コスプレ会場にいるコスプレイヤーを目の前で全否定するようなもんですよ? でもバルカンが黒魔術結社を馬鹿にしているのは、自分こそが一番悪魔に近い場所にいるのだと確信しているからで、悪魔の指示通りに毒を飲んで(魔法瓶に用意)、灯油被って自分に火をつける根性は見上げたものだと思った。いっちゃった人はすごいなー。
 稀覯本が重要な小道具として使われているけれど、ここに出てくるような古本の世界はまったく理解できないんじゃよねー。和綴じ本とか興味ないし、ミステリーとかSFとかのディープなマニヤでもないし、基本的に版とか状態とかあんまり気にしないし、古本のほうが安いからブックオフとか均一コーナー見てるだけだし。たぶん、うちにある本で市場価値があるのはディレイニー『プリズマティカ』とナボコフ『アーダ』ぐらいだろうけれど、それでも一万円はいかないだろうし。あー、トム・デミジョン『黒いアリス』とかどこかに落ちてないかなー。