44話『局長襲撃』

 アバンタイトル薩長明治天皇を擁してクーデタを起こしたとか言っててギャワー。ここまで話が大きくなったら、新選組は今まで以上に関わり合いになりようがないなーと思って見ていたら、近藤は佐々木只三郎と対立しつつも慶喜に具申していたのでビックリしますね。先週、伊東甲子太郎倒幕派の中で発言権がなかったのと比べるとおもしろいね。時代に振り回され取り残されてばかりだった新選組が、いよいよ時代の流れに掉さすことができるようになったみたい。でももう、徳川は幕府どころか大名でもなくなっているんじゃよね。
 薩摩は悪いなあ。けっきょく御陵衛士の生き残りたちも大久保一蔵に唆されたことになってるし。黒船来航以来あらゆる重要な舞台に登場し、幕末の歴史に干渉してきた謎の組織……薩長。明治元勲の全てが薩長だったとも言われている。そりゃ嘘じゃないけど。
 病気の沖田に対するみんなの反応が楽しいね。いっしょに連れて行ってくれというと、みんなして寝てろと合唱。病床の沖田のお見舞いは、みんなして朝鮮人参。無愛想な斉藤が無愛想なまま沖田を見舞って、「あなたのようになりたかった」と言う沖田に「俺のようにはなるな」と言い聞かせているのは、坂本の人斬り話から自分にも言い聞かせているんだろうなー。
 二条城の警備を巡って水戸藩と対峙するところはかっこいいなー。「いったい何人斬った? どれだけ京の町を血で汚してきた?」と罵られて「我らが命懸けで戦ったこの五年、御手前方はいったいなにをした?」と吠える近藤は、まさに御公儀の番犬じゃよねー。このやり取りを無言で見つめる新選組一同は、御花畑の警備のときとは経験も矜持も段違いであり、水戸藩が腰を抜かすのも頷ける。まさに空港の警備を巡って警視庁の武装精鋭部隊と対峙する首都警特機隊のような番犬の迫力。剣を以って立ち塞がる者あれば、これを斬るんじゃよー! でも、このすさまじい場面を創り出したのが、慶喜の勢いだけ命令の行き違いだとわかってずっこける。ぎゃふん。
 『局長襲撃』というタイトルで引っ張るのが上手い。タイトルから近藤が襲撃されるのはわかっているのだけれど、それまでに近藤が長州兵と行き会ったりとか、お孝に新選組の評判を語らせたりとか(ってゆうか、今まで八木さん以外には世間の評判って出てこなかったような)、沖田が襲撃されかけるところとか、おりょうに刺されそうになるところとかでさんざん予感を長引かせ、最後に避けられない歴史的な結末として狙撃される近藤を持ってきているところが歴史ドラマの演出としてうまいなーと思った。