33話『友の死』

 ギャワー! 山南敬助には、切腹させられるとわかっていても切腹せねばならんときがあるんじゃろかー?
 土方も含め、誰も彼もが山南を助けようとするけれど、切腹の命令自体は撤回しないところが今回のキモじゃろかー。新選組を守るために切腹命令を出したならば、それは断じて遵守せねばならない。山南がみなの手引きを辞退して切腹を待ったのは、隊の結束を固めるために切腹命令を出すという今の新選組を内部から変えられなかった自分自身に責任を負ってのことなのだと思う。山南は結成以来の同志(個人)であると同時に新選組の総長(組織の一員)であり、どちらか一方だけで存在するわけにはいかない。新選組にはもう山南敬助の居場所はないが、脱走した総長の末路を示す仕事は残っている。
 個人と組織の軋轢がいよいよ激しくなってきておもしろいなあ。個人の気持ちとしては山南を助けてやりたいけれど、組織としては脱走した総長を許すわけにはいかない。所属する個人がだれも望んでいないのにも関わらず、彼らが営々と築き上げてきた組織は処分を求めており、それはだれにも止められない。近藤勇を盛り立てるための新選組という組織が、いつしか近藤や土方の手からも離れて彼ら自身をも支配していく。組織とは個人の情を無視して作動するように求められて作られた機械装置であり、法度違反という同じ命令を入力されれば、敵である新見錦切腹させたのと同じロジックで、今度は仲間を切腹させねばならないのだ。
 山南と明里の別れもよかったけれど、山南が後事を託すのが原田と永倉というところがおもしろいね。いつか袂を分つ日が来る彼らは、今後近藤をどう見るのだろうか。そして河合に金勘定のことをアドバイスするところも泣けるなー。山南のアドバイスは全部無駄に?
 伊東甲子太郎が徹頭徹尾空気を読めてなくておもしろかった。多摩時代からの仲間は助けてやりたいと思う気持ちを押し殺しているのにしゃしゃり出て山南の助命嘆願をしてみたり、近藤と土方が二人で山南の死を噛み締めているとやってきて一首詠んでお悔やみを言ったり。ブチ切れた近藤に叱責されて怪訝な顔をするところがすごく変。……ありゃ? ここは泣くはずの場面じゃが……哀歌は多摩の百姓には難し過ぎたんじゃろか。山南の切腹は絶対伊東が絡んでくると思ってたんだけど、けっきょく伊東は最後まで蚊帳の外。文字通り「新参者」に入り込む隙間はなかったわけだ。
 近藤はなんかどんどん新見錦みたいな顔になっていくと思った。とくにむっつりしているとき。太った?
 あと、ちょっと前に山南敬助の墓を見に行こうとして散々迷ってたどり着けなかったことを思い出した。明日くらいから光縁寺周辺は大変なことになっているんだろうなー。壬生寺新選組ショーがやってるくらいなら、前川邸で山南敬助切腹ショーぐらいやりかねない。京都の人は金のためならそれぐらいのこと平気でしますよ?(偏見)