黒いオルフェ

 ギリシア神話オルフェウスの話を、黒人を主人公にしてリオのカーニバルを舞台に大胆に翻案した話らしい。大胆すぎると思った。でも実際見てみるとあんまり違和感ないし、竪琴のかわりにギター(ブラジルだから、オルフェが歌っているのはボサノバ?)というのも悪くないなあと思った。
 オルフェウスの話ってうろ覚えだから大丈夫じゃろかーと心配だったけど、気にしなかったら気にしないで大丈夫っぽい。うろ覚えでも、オルフェがギターの腕前のおかげで警官に見逃してもらったり、死んだユリディスを追って螺旋階段を下って(冥界?)、犬(ケルベロス?)のいる門を抜け、怪しげなダンスでトランス状態になっている人たちのところでユリディスの霊を口寄せしてもらって、「振り向いたらダメ」というユリディスの言葉を無視して振り向くと、そこにはイタコみたいな老婆が居たり、有名なところはなんとなくわかった。オルフェが嫉妬深いミラの投石で崖から落ちて死んじゃうラストシーンはギリシア神話と違い過ぎるのでビックリしますね。
 出てくる女の子がみんな喜怒哀楽の変化が激しくて、見ていて楽しい。オルフェの婚約者の嫉妬深いミラをはじめとして、ユリディスの従姉妹のセラフィタが恋人シコと繰り広げる大騒ぎとか、さっきまで怒ってたのがすぐ上機嫌になって、悲しい顔をしてたのがサンバのリズムで踊りだすと笑顔になる。黒人の女の子は笑うと歯が印象的だし、表情の変化が目に見えてわかるし豊かなので楽しいね。未通女かったユリディスが、オルフェと一晩過ごした朝に見せる物憂げな表情とかすごくいい。オルフェが女の子の御機嫌を取っているのは、女たらしとゆうか、こうゆう表情の変化が見たいからかもなーと思った。まあ、どう考えてもオルフェは女たらしでその報いを受けるんじゃが。
 カーニバルのシーンは圧倒的だなあ。でもなんかあんまり人がいるような感じがしないので不思議。画面内の密度はすごいのだけれど、引いてみると大群衆でもないような気がするのは、撮影的な都合? 冒頭リオデジャネイロに着いたユリディスが日中サンバの練習で浮かれる群集にもみくちゃにされるところと、カーニバル本番の夜にユリディスが死神の扮装をした男に追われて逃げているとサンバに熱中している群集にもみくちゃにされるところは、音楽の盛り上がりもあいまってすごい迫力。