ロン・グーラート『ゴーストなんかこわくない』 扶桑社ミステリー文庫

ゴーストなんかこわくない―マックス・カーニイの事件簿 (扶桑社ミステリー)

ゴーストなんかこわくない―マックス・カーニイの事件簿 (扶桑社ミステリー)

帰省したときに必ず立ち寄る古本屋の棚をボケーと見てたら気になってなんとなく購入。あとから考えてみたら、この作者ってアホSFアンソロジー『グラックの卵』に作品が採られてたのね。道理で見覚えがあるはずだ。

前書きで「ジョン・サイレンスとかカーナッキみたいなゴーストハンター小説とは違うよ」と書いてあって、その通りすぎる。てゆうか、ブラックウッドやホジスンがホラー小説のいちジャンルとしてゴーストハンターものを作り出し、そのカウンターとして「愉快なゴーストハンター」を作り出したのだろうけれど、むしろ正統派のゴーストハンターを知らないのでふしぎな気持ち。パロディやオマージュは、オリジナルのオリジナル性をものすごく浮彫りにしてしまうし、まして恐怖と笑いは紙一重の関係だから、今から正統派ゴーストハンターを描くのはものすごく難しいのかにゃーと思った。

『待機ねがいます』 祝日に象に変身してしまう呪いの意味が、ものすごく意味があるのにものすごくテキトーでビックリしますね。

『アーリー叔父さん』 うっかりテレビの中に封じられる幽霊。この弛い雰囲気がいい。

『撮影所は大騒ぎ』 幽霊払いの儀式がうまくいかなくても、てゆうかそもそもそんな儀式が必要になる前に、幽霊と同意書を交すというオチがアメリカすぎて納得できすぎる。てゆうか、ゴーストストーリーで納得しちゃっていいのかとか、そういうようなことが言いてえ。

『人魚と浮気』 人魚と浮気というとものすごくロマンティックだが、実際男が会っていたのは半魚人なのでギャワー。容姿の差は男女差別だと言い切れる。

『カーニイ最後の事件』 ゴーストハンターの婚約者がたまたま代々の魔女であり、前の勤め先の社長が魔法使いなんてことだって十分ありえるのだたぶん。ものすごく悠長な会議シーンがおもしろすぎる。

『新築住宅の怪異』 わりとオーソドックスなゴーストハンターな話だが、下っ端社員の悲哀たっぷりのノームのキャラクターがいい。隠された財宝の管理人も大変だ。

『あの世から来たガードマン』 山田風太郎『幻燈辻馬車』みたいな話。もっと大掛りに、実在した偉人を召喚してもよかったんじゃ?と思わなくもないところも似てる。

『幻のダンスパビリオン』 庭先に毎晩ダンスパビリオンが出てきてビッグバンドが生演奏という大掛りな話の裏側がショボすぎて楽しいね。

『姿なき妨害者』 今気が付いたけど、この短篇集って怪異そのものってわりとどうでもよくね?(今更) 料理に凝ってて料理にしか興味ないわりには致命的に料理がまずいお父さんとか、脇役の普通の人がおもしろすぎる。