耳年増

洋酒メインに飲んだくれるのは、明らかに中高生から読み耽ってきた海外翻訳文学の受け売りだと言い切れる。翻訳文学の中に出てくる、なんかよくわからん固有名詞の酒に、ひたすら憧れてきた田舎者が、失われた青春に復讐を果たすべく潰れるまで飲んだくれるよ!
父親がいろんなところでもらってきてたブランデー(コニャック)の類から始まって、ブコウスキーとかカーヴァーの小説に出てくるダメな飲んだくれの定番ウオッカウイスキーと安ワイン(公園で紙袋に入れたまま瓶からラッパ飲みしたい)をつまみ飲みしつつ、イギリス娼婦の悲惨な末路に想いを馳せながらジンを呷ったり、ラムの水割りグロックをお茶代わりに飲んでグロッキーになったり、現代ではすっかり飼い慣らされた緑色の悪魔アブサン(色の変化だけ楽しい)とか、アイルランドものの定番黒ビールとか、シェリーにくちづけをしたりもしてみる。トカイは無理としても貴腐ワインも飲んだし、あとはエドガー・アラン・ポー『アモンティリャードの酒樽』で知ったアモンティリャードのシェリーを飲めば、それほど高級ではないけれど小説の描写から名前だけは知っていて飲みたかった酒はひととおり飲めるんじゃろか。いろんな小説に出てくるけど、ウイスキー(バーボン)のソーダ割だけは未だになんか納得できないものがあるとしても。てゆうか、バーボンだけはどうやって飲んでもどうしても飲みつけない。
どうでもいいけど、江戸川乱歩の短篇『月と手袋』の中でジョニー・ウォーカーが高級酒扱いされていてビックリすることもある。それなりの値段で飲めるなんて、いい時代になったもんだ。別に好きじゃないけど。