佐藤亜紀『モンティニーの狼男爵』を読み終わる。他の佐藤亜紀の小説はおもしろいけどなんか合わないなーと思っていたけれど、これはぼくの好みのど真ん中でとてもよかった。孤高の人狼の独白かと思って読んでたら、すさまじくヘタレなところがすごくいい。報われぬ愛を切々と語っているのかと思ったら、遠回しのノロケかこの野郎。おもしろすぎる。ってゆうか、ラウールはわりとストレートにヘタレてるけど、このヘタレぶりは中島敦山月記』の李徴と同種類の人狼だと思った。これは尊大な羞恥心と臆病な自尊心の陰謀であり、俺の毛皮の濡れたのは夜露のためばかりではないんじゃよー! 過剰なヨーロッパ趣味も、こうゆう作品で使われていると仰々しさがおかしみを引き出していてすごくいいと思う。
 次はP・K・ディック『ドクター・ブラッドマネー』。