その後も広沢りん子先生は何かと問題を起こしては、「私たち」という一人称複数形をうまく利用してわしを事件に巻き込んで、なぜか空が青いのもポストが赤いのもすべてわしのせいにされて何度も任務完了。面倒ごとはほぼ全部わしに回されてくるけれど、代行教師だから文句言えないの。そんで、散々盥回しされて手の施しようない末期症状の癌のような事件の解決に失敗すると失格教師の烙印を押されるのもわしなの。別に、気に入った生徒との重婚とか企んでないのに(それは『卒業 −Graduation−』)。
 足長おじさんを探しにわざわざ転校してきた天才バイオリニストの誤解を解いたり、ダメダメだった伝説の騎馬戦ドリームチームが屈辱で目覚めて雷鳴とともに「帰ってきた」り、女教師が元彼と教え子の間に挟まれつつ恋に仕事に頑張ってみたり、趣味がハムスター握り潰しみたいな美術教師がやってきてイヤすぎるサイコサスペンスになったり、その合間に金八っつぁんの「フォースを使うのじゃ!」という罵声が飛んできたり、した。なんかシナリオ終了ごとに毎回エンディングで『贈る言葉』がいいタイミングで流れるから騙され気味だが、これ絶対に金八先生と違うと思った。ベタベタな要素を組み合わせて、うまいこと話を作っているなーと毎度毎度感心させられる。上品なパロディ満載のお約束シナリオの強みは、その後の展開がわかってても、やっぱり感動させられてしまうところじゃよねー。シナリオ自体が起伏に富んでいるので、選択肢を選ぶようないわゆる前世紀のアドベンチャーゲーム的要素は少ないけれど、重要な場面では今まで集めたカード(証言)から展開を選ばせることでプレイヤーをゲームに参加させているところがおもしろい。この独特の金八感覚は、小細工どころか舞台装置をフル回転させて、ドラマを演出して乗り切っているからかにゃー。なんでもありのシナリオ群に、金八先生という舞台を持ってきたことは圧倒的に正しいと思った。
 なんか思ってたよりシナリオ少ないし(ボリュームは多いのだけれど)、印象の濃い生徒が多い一方で印象の薄い生徒が何人かいるなあと思ってたら、2週目3週目と進むとまた違うシナリオが出てくるらしい。
 あと、次々に起こる事件を解決しつつ、先生としては生徒の将来を慮り、彼らの才能を伸ばし開花させたりしたりしないといけないらしい。あのね、あんた達(そのシナリオで主人公になっている悩み多き生徒)は自分一人のシナリオのことを考えればいいけど、先生は二十人分のグッドエンディングを考えなきゃいかんわけよ。……やめよっかなぁ、考えるの。
 うそうそ。おもしろいから飽きるまでもうしばらく続ける。次はどんなベタなシナリオで来ても感動しないぞ!